恋愛セミナー49【匂宮】第四十二帖 <匂宮 におうのみや> あらすじ源氏亡きあと、あの輝くばかりの美しさや羨望をあつめる人物はいないようです。 明石の中宮が生んだ三宮と女三宮の生んだ薫が、美しいと言われてはいますが、 それも光る源氏の子や孫だと思うからでしょう。 三宮は兵部卿宮となり、紫の上の愛した二条院に今も住んでいます。 姉の女一宮は六条院の紫の上のいた春の町の東の対に。 二宮は六条院にいて、今は右大臣になっている夕霧の中の姫(次女)を妻に。 そして東宮である一宮は夕霧の大姫(長女)を妃に迎えています。 花散里は源氏に二条の東の院を残されて、移りました。 女三宮は三条の宮邸に。 そして明石の君は大勢の孫達の世話をしていて、二条院と六条院は彼女の子孫のためにあるような有り様なのでした。 夕霧は、自分が生きているうちは六条院の栄えを保とうと、落葉宮を花散里の住んでいた夏の町に移しました。 そして雲居の雁の住んでいる三条の屋敷と月の半分、十五日ずつ、一日おきに真面目に通っています。 薫は源氏が遺言したとおり、冷泉院に息子同様に可愛がられ、元服も院のもとで行ないました。 女三宮は尼として仏道修行をしていますが、息子である薫をまるで親のように頼っています。 冷泉院や帝の信頼もあつく、東宮、二宮、三宮のよき仲間として引っ張りだこの薫。 夕霧も亡くなってしまった源氏のかわりに大切に世話をしています。 それでも、自分の出生の秘密をかすかに聞いている薫は、はっきりしたことが知りたいと悩み深い若者になっていました。 すでに中将の位を受けた薫は、世の声望を集め始めています。 薫の体からは生まれながらにして素晴らしい芳香が立ちのぼっていて、遠くからでもわかるほど。 これに対抗して、兵部卿宮はあらゆる香の研究に熱心で、花も香りのあるものは枯れているものまでも贔屓にしています。 それを世間では「薫る中将、匂う兵部卿宮」と騒がしく噂し、貴族の親達も娘をこの二人に嫁がせたがっていました。 夕霧は娘たちの中で特に美しい藤典侍の生んだ六の姫をこの二人のどちらかに嫁がせたいと思い、 子のいない落葉宮の養女として六条院で華やかな暮らしをさせて世の若者の気を引いています。 匂宮はあちこちの姫たちに言い寄り、孫たちの中では一番源氏に似ているようです。 まだ決まった妻はいませんが、冷泉院のたった一人の皇女である女一宮にいまのところ執心している匂宮。 薫は女性に全く興味がないわけではないのですが、すでに出家願望があるので、妻を迎えるなどという 煩わしい関係は避けようとしています。 それでも、一度関係を持ってしまうと、それほど低い身分ではないのに女房として仕えてまでも 薫のそばにいようとする女性が後をたたないのでした。 恋愛セミナー48 1 薫と匂宮 よきライバル再来 源氏の死から八年。 六条院も様変わりしました。 明石の君の係累がどんどん広がり、明石入道の願望が充分すぎるほど成就しています。 皇子たちが次々に夕霧の娘を娶っているのは、実際の宮廷でのし上がった 藤原道長を彷彿とさせます。 夕霧の落葉宮への恋、どうやらうまくいったようです。 律義者の子沢山の名のとおり、きっちり雲居の雁と不公平にならないように通っているあたり、 ユーモラスで笑いを誘いますね。 そして薫と匂宮。 晩年の源氏の心を慰めていた幼い皇子が、すでにプレイボーイになっている様子。 薫は出家願望を持ちながら、女性がどんどん集まってしまう。 源氏の資質は、やはりこの二人に受け継がれているようです。 源氏は香はほのかに薫るのがたしなみ深いとしていましたが、二人の香りはかなり特徴的なよう。 姿が見えなくても、漂う香りで二人がいることがわかってしまうほど。 姿形もさりながら、まとった匂いが女性を惑わす効果も大きいようです。 匂いに負けない教養に裏打ちされた自信も、モテる男性の雰囲気を作っているのでしょう。 薫の出家願望は、晩年の源氏の影響も大きいのかもしれません。 14歳にして世を捨てたいと願う薫がこの先どう歩むのか、とくとご覧ください。 |